25名規模の事業所で代表(Managing
Director)として6年間勤務いたしました。
事業所には日本からの駐在員がもう1名、その他は現地スタッフと一緒に働いていました。YEは、基本は販売子会社ですが、販売だけでなく生産や技術部門もあり、現地のお客様の要望によるカスタマイズ製品の設計、製造、販売も行っており、小さな事業所ではありますが、様々な機能が要求されます。
私の役割としては、会社方針、事業施策を本社および現地トップマネージャーであるGeneral
Managerと決定することでして、実務は現地マネージャーが指示・実行しており、自ら営業活動をしたり、直接的に製造の管理をすることはありませんでした。
会社方針と実際現場で行われている業務があっているか方向性の修正を行い、また施策実行にあたり、必要な人材、ITなどの経営資材の投資の決定に時間を費やしていました。
品質管理に関しては本社とのレベル合わせが課題であったため、もう一人の駐在員と一緒にプロジェクト化して直接課題に取り組んでいました。
コロナ前は現地市場や景気動向を肌で感じるために定期的に代理店様やエンドユーザー様をYEの営業マンと一緒に訪問し、ヨーロッパ各地へ出張することもありました。
また日本本社との接続役として、製品情報のアップデートや不具合情報、品質に関わる現地からのフィードバックを本社へ行っていました。コロナ後ではオンラインによる定例のミーティングにて行い現地での対応策を決定していました。こちらはもう一人の駐在員が主でしたので、サポート的な役割でした。
仕事の効率について、文化的な背景の違いからか異なるアプローチで解釈されていたことです。
例として経理の処理で、20セントの支払い差異があった際に、間違いを修正して利益を正しく管理し、問題の追及をおこなう。これが日本で私が教わってきたことです。
しかし、オランダでは、間違えを探すために数十ユーロのコストをかけることは会社にとって不利益であるという解釈でした。もちろん、差異が継続的に見られた場合には、不正に繋がり損失が大きくなるので調査は行います。ただ突発的に発生したものはコストと見合わないため別途処理を行って修正します。このような考えが、欧米諸国が今や日本よりも生産性が高いことの所以なのではないかと感じました。
また、年齢、役職に関係なく自分の意見をハッキリと伝える文化がありました。赴任当初は部下から強く反対意見を言われたことに戸惑いましたが、いったん慣れてしまうと、賛成なのか?反対なのか?わかりにくい回答よりもよっぽどストレートで仕事がしやすく、結論がはっきりして効率よく業務が進みました。
現地従業員との意思疎通が大変でした。背景の異なる人々と日本にいる時と同じ感覚で仕事を進めることができません。日本にいると日本人の間で気が付かないうちに持っている共通認識や同じような常識というものがありますが、異国ではそうとも限りません。価値観の違いによる認識の差や、伝えたと思っていたことと実際に現地スタッフが理解していたことが違い、全てやり直しが必要になったり、期待したアウトプットが無かったりしました。説明の方法を変え、ゴール(期待しているアウトプット)を明確にすることで誤解がなくなるように気を付けました。
やりがいは、日本にいたときよりも大きな範囲の業務に対して責任を持たせてもらえたことです。知識の不足している業務も多くありましたが、一つ一つの課題に取り組むことでたくさんの経験を積むことができました。
ヨーロッパという地域は同じように見えて各国の特徴も国民性も実は大きく違っていて、仕事でも様々なタイプのお客さんと触れることができたのは非常に良い経験をさせてもらったと思っています。これらの違いを知ることは世界の多様性に触れた気持ちになりました。もちろんプライベートではいろんな国を訪問し、充実した休暇も過ごすことができました。
海外勤務では現地スタッフとの協力なしでは業務が遂行できないので、現地人との協力が必須です。前述の経験から、オープンマインドで、自分の常識だけにとらわれず、他人を尊敬し積極的なコミュニケーションによって問題を協力して解決できる姿勢を持っている方が海外勤務で活躍できると思います。